歯周病治療
歯周病とは
歯周病とは、歯茎から出血したり腫れたりする炎症のコトと思われがちですが、その実は、歯を支える骨や歯根膜が消失する『細菌感染症』です。
原因は歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に巣喰う歯周病菌です。代表的なものはPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)という細菌です。この細菌は嫌気性で酸素濃度が低いところで活発に繁殖します。
酸素が嫌いな歯周病菌たちは、歯石のフタで栓をされて低酸素になった歯周ポケット内に集合住宅(バイオフィルム)を作り、元気に生活しています。彼らの出す生活廃棄物が骨や歯根膜を破壊する原因です。
歯周病の診断 歯肉炎と歯周炎
歯周病は『歯肉炎』と『歯周炎』に大きく分けられます。同じ原因による、同一の病気なのですが、炎症や組織破壊のおよんだエリアによって分類されています。
- ・歯肉炎 = 炎症が歯肉エリアに限局しているもの
- ・歯周炎 = 炎症が歯槽骨エリアに及んでいるもの
一般的に、初期段階の『歯肉炎』が始まり、やがて『歯周炎』へと悪化するのですが、注意したいのは、口の中を見ただけでは歯肉炎なのか歯周炎なのか全く区別がつかないということです。中等度~重度の歯周炎では歯槽骨が元に戻るということは非常に難しく、『歯肉炎』の段階で発見・治療を行うことが重要です。
歯肉炎
歯の周りにバイオフィルム(歯垢)が付着することにより歯肉が腫れ上がり、歯周ポケットが深くなった状態です。自覚症状を感じることがほとんどなくブラッシング時の出血程度の場合が多いようです。
初期歯周炎
歯周ポケットが深くなり、歯を支えている歯槽骨が喪失しはじめている状態です。歯槽骨の吸収は軽度(歯根長さの1/3以下)で歯の動揺は微小です。自覚症状を感じることがほとんどなく歯肉の腫れとブラッシング時の出血程度で、口の中を見ただけでは歯肉炎との違いはわかりません。ですが、確実に歯槽骨の破壊ははじまっています。
中等度歯周炎
歯周ポケットはさらに深くなり、歯を支えている歯槽骨の喪失が増えた状態です。歯槽骨の吸収は歯根長さの半分まで迫り、歯の動揺は自覚できる程になります。症状として歯肉腫脹・歯肉出血・口臭が認められます。また、症状が急性化することもあり、歯周ポケットから膿が出ることもあります。
重度歯周炎
歯槽骨が2/3以上喪失した状態です。歯槽骨や歯根膜は支持能力を無くし、歯は常にグラグラと揺れて、咬むたび痛みます。症状として歯肉腫脹・歯肉出血・口臭がよりきつくなり、歯周ポケットからの排膿も常態化します。
歯周病が及ぼす全身への影響について
歯周病菌は腫れた歯肉から血管に侵入し、血管内にバイオフィルムを作ります。やがてバイオフィルムは血栓になり、脳血管で詰まれば『脳梗塞』、心臓の血管で詰まれば『心筋梗塞』になります。
また、歯周病菌から出される内毒素が血管内に入り込み、免疫細胞からの特殊な起炎物質TNFα(腫瘍壊死因子)を産生させます。TNFαにはインスリンがつくられにくくする作用があります。これに対して膵臓はより多くのインスリンを産生しようとします。やがて、インスリン産生細胞である膵β細胞が疲労困憊し、結果として血糖値が上がり『糖尿病』を発症します。
また、TNFαは関節部の炎症の主な原因物質といわれ、関節の痛みや腫れ関節破壊をおこすだけでなく、さらに他の炎症をおこす物質(炎症性サイトカインといいます)を作らせて『関節リウマチ』の発症や悪化をひきおこします。